2006年11月12日

ドミニック・アングル「グランド・オダリスク」

The Grand Odalisque

芸術が時代を先取りするのかどうかはわからないが、少なくともある種の芸術家たちは、時代の底の方から吹いてくる風を感じるのに違いない。そうして生まれた芸術が、さらに時代の空気を創っていくのかもしれない。

マリー・アントワネットの時代、享楽的な貴族趣味のロココ様式を否定する、のちに新古典主義と呼ばれる芸術の潮流が生まれたといわれる。
それは、ギリシャ・ローマ時代の知的で論理的な観察を模範としたらしい。
緻密な描写、理想的な人体の再現といった古典様式の再評価である。
新古典主義の流れは、フランス革命からナポレオン帝政へと、時代の空気が変化する中で広がっていったといわれる。

ドミニック・アングルは、新古典主義を代表する画家である。
古典様式を超える、新しい美意識の創造があった。
同時代に対立したロマン主義の画家ドラクロアの「色彩」に対し、アングルは「線」にこだわったといわれる。
描かれた女は「背骨の椎骨が普通の人間より3本ほど多い」と批判されたらしいが、女のくねった背中がおそろしく悩ましい。
官能的な曲線の創造である。

オダリスクとは、宮廷のハレムに暮らす女たちのこと。
かつて、この世の奥深くに咲いていたらしい、妖しい花の曲線。

「グランド・オダリスク」1814年
ジャン=オーギュスト=ドミニック・アングル Jean-Auguste Dominique Ingres
1780-1867年,フランス 
posted by アートジョーカー at 15:00| Comment(0) | Others | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年11月11日

フェルメール「画家のアトリエ」

Allegory of Painting

画家に描かれている女性は、ギリシア神話の神クレイオに扮している。
クレイオは9人のミューズ(女神)のひとりで、歴史を司る。

女神は、月桂冠を被り、右手にトランペット、左手に歴史書を抱えている。
「勝利を得、名声を高らかに響かせ、歴史に刻まれる」
小道具たちは、画家が将来手にする栄光の象徴であるといわれる。

フェルメールは宿屋の主人をしながら妻と10数人もの子を養っていたらしい。
将来の画家としての名声を確信していたのかもしれないが、43歳の若さで他界した。借金を残し家族は破産したともいわれる。真の名声を得るまで、200年ほど待たなければならなかった。

一時期、アドルフ・ヒトラーがこの絵に執着したらしい。
やがて悪魔的な手法で買い取ったという。
「勝利を得、名声を高らかに響かせ、歴史に刻まれる」
クレイオという女神に託された寓意が、ヒトラーの心にも強く響いたのかもしれない。

「画家のアトリエ(絵画芸術の寓意)」1665年頃
ヨハネス・フェルメール Johannes Vermeer1632-1675年,オランダ
posted by アートジョーカー at 05:51| Comment(0) | Johannes Vermeer | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年11月07日

無意識の滴り?ジャクソン・ポロック

Number 8, 1949


11月2日付のニューヨークタイムズ紙によると、ジャクソン・ポロックの「No.5,1948」という作品が、絵画取引史上最高額となる約1億4000万ドル(約163億8000万円)で売買されたらしい。

ジャクソン・ポロックは、抽象表現主義の代表的な画家といわれる。
その創作手法は、アクション・ペインティングと呼ばれた。
先行するシュルレアリストたちの影響を受けながらも独自の表現を求め、ドリッピングという「垂らしの」技法を深めた。

筆に絵の具を含ませてカンヴァスに垂らしたり、振りつけたりする。あるいはペンキを缶から直接垂らす。そして砂や異物を塗り込んだり、押しつけたりする中で、次第に濃く深い、独特のマティエールが堆積されていく。

たとえばフロイトの理論に傾倒したダリは、独自の「偏執狂的批判的方法」によって、無意識の世界のビジョンを示そうとした。
それは、燃える麒麟であるとか、溶けた時計であるとかの不思議なビジョンだったが、具象的であり、とりあえず何が描かれているのかはわかった。
しかし、ポロックの場合は物のかたちがない。模様のようなものが抽出された。

ポロックの絵は無意識のイメージの滴りか、それとも計算された画家のアイデンティティの表現か。
それはどちらでもいいと思う。
創作という行為自体が、自己の無意識、あるいはユングのいう集合的無意識との対話と考えることもできるからである。その表現が面白いか否かも、無意識にまで訴えかけてくるかどうかにかかっているのかもしれない。

なんだかわからないが、もの凄い表現。
おどろおどろしい無数の人間の業のようなものが、カンヴァスに堆積しているような感じがする。
ポロックの絵のインパクトがあまりに凄まじいので、記憶に深く刺さり、ドリップされた絵は、すべてポロックの亜流に見えてしまうのである。

「Number 8」1949年
ジャクソン・ポロック Jackson Pollock 1912-1956年,アメリカ
posted by アートジョーカー at 05:48| Comment(0) | Others | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。


×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。