
「アルンハイムの地所」は、米国の作家E.A.ポーの同名の短篇小説に触発されて描いたといわれる奇妙な絵。
石の欄干の上に卵を抱く鳥の巣があり、背景には猛禽類のような形をした岩山が広がっている。
同じマグリット作の「千里眼」という絵のように、卵の未来が背景に映し出されているのか。
あるいは卵の持つポテンシャルが岩山に滲み出しているのかもしれない。
「人の姿形をしているが、地面に映る影が悪魔の正体を晒している」
といった、不気味な怪奇映画のような趣のある絵である。
ポーの「アルンハイムの地所」は、莫大な遺産を相続した詩人のエリソンが、理想的な美を求めて楽園を創造する話。
神の創造した自然ではなく、詩人の手になる新たな美と調和をめざした人工庭園である。
江戸川乱歩もポーに誘発されて、偏執狂ともいえる男が造った、奇妙で官能的な楽園の話「パノラマ島奇談」を書いている。
「アルンハイムの地所」
ルネ・マグリット Rene Magritte 1898-1967年,ベルギー