2006年11月01日

アンリ・ルソー「結婚式」

The Wedding

結婚式の記念写真のような絵だが、違和感がある。
この世の事物の縮尺や遠近感が狂ってしまった、不器用で不条理の世界。
正面を見据える花嫁に笑みはなく、体は浮遊しているような感じで、これから異世界にでも嫁いで行きそうな雰囲気がある。
後列の右にいる、髭の男がルソー自身だといわれるが、知らぬ間に記念写真に割り込んできた、謎のおじさんのような感じもする。正面の黒い犬は、婚姻の見届け人であるかのように不思議な存在感を示している。

「自然以外に私の師はいない」

オンリーワンとは、誰も追っかけてこられないほど、他人をぶっちぎってしまった存在のことだと思う。
ルソーの絵は、凛とした孤高の香りがする。
美術アカデミーにも学ばず、理論もなく、特定の流派にも属さず、自分だけの謎の絵画世界をひらいた。
40歳を過ぎてから初めて絵を発表した。
場所は、金さえ払えば誰でも出展できる独立芸術家(アンデパンダン)展だったという。

ルソーが師とした自然の姿は、ルソーの脳内世界で奇妙に着色され、再構成されたに違いない。

アンリ・ルソー Henri Rousseau 1844-1910年,フランス
「結婚式」1905年
posted by アートジョーカー at 06:35| Comment(0) | Henri Rousseau | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月23日

アンリ・ルソー「戦争」

War, or the Ride of Discord, 1894

大戦争を、たったひとりの悪童が起こすこともある。
手のつけられない悪餓鬼が、無邪気に暴れ回って勝ち誇る。
もしかすると、すべての戦争は、不気味なエネルギーを持った強力な悪童の仕業なのかもしれない。

ヨーロッパ人は、よく戦争をしてきた。
100年ぐらいぶっ続けで戦ったりしていたようだ。
日本人より戦争をよく知り、悩み、戦争について深く考えているのかもしれない。

ルソーは、幻想的な密林や、不思議な風景としての肖像画などをよく描いているが、この絵は少し変わっている。
画面には強い妖気が漂っている。
悪童の後ろにいる蹄のある黒い動物は、馬ではなく悪魔なのかもしれない。
戦争の本質とやらを、えぐり出しているような感じがする。

アンリ・ルソー Henri Rousseau 1844-1910年,フランス
「戦争」War, or the Ride of Discord 1894年
posted by アートジョーカー at 04:34| Comment(0) | Henri Rousseau | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年05月20日

アンリ・ルソー「蛇使いの女」

Snake Charmer, 1907Snake CharmerExotic Landscape with Lion and HuntersExotic Landscape

ルソーは平凡な税関職員で、海外旅行の経験がなかったという。
つまりは熱帯のジャングルも、エキゾチックな蛇使いの女も、野生のライオンの姿も、自身の目で観たことはなかったらしい。

ルソーの生暖かい意識だけが、熱帯へと飛んだ。
どこへ飛んだのかはわからない。別の星まで飛んで行ったのかもしれない。
見たこともないような奇妙なカタチをした熱帯樹林には、濃い精気が宿っているようだ。
そこは、船に乗って、じかには行けない異世界。
そこにいる動物たちは、この世の生き物ではないのかもしれない。

世界はパラレルに存在していて、観察によってひとつの世界が決定するという。
ルソーの世界は、奇妙にずれている。
しかしそこには、不思議な懐かしさがある。
人類の故郷であるかのような懐かしさが。

アンリ・ルソー Henri Rousseau 1844-1910年,フランス
「蛇使いの女」1907年
posted by アートジョーカー at 15:33| Comment(0) | Henri Rousseau | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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