2006年10月12日

フランツ・マルクの見た世界

Little Blue Horse, 1912

アドルフ・ヒトラーは、マルクの絵を観て「青い馬などいない」と一言で切り捨てたという。ヒトラーも若い頃は画業を志したといわれるが、古典的な風景画などを描いていた。ヒトラーの性格というか、価値観がよく表れているエピソードだと思う。

ラスコーやアルタミラの動物絵画には、時空を超えてくるような動物の妖気が漂うが、マルクの描く世界にも自然の濃い精気を感じる。
「妖精」というものが本当にいるのかどうかは知らないが、たとえば大昔に自然の精気を感じた(らしい)人が、いまに伝わる「妖精」の姿として表現したのかもしれないし、マルクもまた独特の色彩感覚でもって自然の精気を描き写したのかもしれない。

フランツ・マルクは1880年、ミュンヘンに生まれた。
父親は風景画家だった。
ミュンヘン美術アカデミーで学んだのち、動物画家ニースレと出会う。さらに後期印象派、日本の浮世絵などに触れることで、動物をモチーフとした独自の画風をめざすようになる。
1911年、カンディンスキーの主催する新芸術家協会に参加。
ドイツ表現主義のグループ「青い騎士」の重要メンバーのひとりとして年鑑の編集や展覧会の企画に関わる。
第一次世界大戦で召集され、ヴェダンの戦いで戦死した。享年36歳。

Little Blue Horse, 1912
フランツ・マルク Franz Marc
1880-1916年,ドイツ
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2006年10月04日

フランツ・マルク「羊」

Sheep, 1912

眠れないときは羊を数えなさいといわれる。
余計なことは考えないで、単純な作業を続ければ眠くなるという心理学的な効果があるのかもしれないが、もともとは英語のsleep(眠り)と、sheep(羊)の語呂合わせから生まれた言い伝えだといわれる。
ひつじ、と数える日本人には関係がない。
しかし、羊のいる風景は、のんびりとした優しい感じで、牧歌的な趣のなかで安らぐイメージがある。

まどろむ、という言葉がある。
目蕩む、あるいは微睡むと書く。
深く、長く眠りこけてしまえば意識不明だが、まどろむのは意識が彷徨うようで気持ちいい。
空間と溶けあうような心地よさがある。

羊の睡眠時間は短いらしい。1日30分ほどではないかといわれる。
人間から見ると、まどろむだけの時間だが、実際のところ、どのような眠りなのかは知らない。

羊はダ・ヴィンチのような優秀なショートスリーパーなのかもしれない。
あるいは自然と溶けあうように、ひがな一日、眠るように暮らしているから「睡眠」は少なくてもいいのかもしれない。
フランツ・マルクは「動物の知覚を想い描く」ことをめざしたという。

Sheep
フランツ・マルク Franz Marc
1880-1916年,ドイツ
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2006年09月27日

退廃芸術家フランツ・マルク

Pferd in Landschaft

マルクの作品に「世界を前にする犬」という傑作がある。
残念ながら個人所有のため画像がない。
マルクの愛犬ルッシが、地上の景色を見ている。その後ろ姿を描いた絵である。

これは、その馬バージョンのような感じ。
人間の目が世界を「客観視」しているわけではないだろう。
馬には馬の色彩世界があるのだろうし、鳥は人間が捉えることのできない極彩色の世界を感知しているのかもしれない。
犬は人間とは違うものを気にして景色を観ているだろうし、馬の目は横についているので実際のところ何をどう見ているかなどわからない。たとえCGでその世界を再現してみたところで、そのCGを観るのは結局人間の目なのである。

同じ動物としての根っこの部分で、自然を感じてみるのがいいのかもしれない。

Pferd in Landschaft
フランツ・マルク Franz Marc
1880-1916年,ドイツ
posted by アートジョーカー at 15:15| Comment(0) | Franz Marc | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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