2006年09月24日

パウル・クレー「忘れっぽい天使」

Vergesslicher Engel, 1939

たとえば忘れ物をして叱られて、もじもじしているような天使。
病を得た晩年、天使という名のクレーの子供たちが、たくさん生まれてきたようだ。
泣いている天使、おませな天使、醜い天使、そして忘れっぽい天使などなど。

不思議なことだが、人は死を予感すると、もしくは死を覚悟すると子供の頃のことを思い出すものらしい。
たくさんの天使の絵は、おそらくクレー自身の中にいた、いろんな天使たちの姿を描いたもの。

子供の頃の自分を描くことで、悲しかった自分、恥ずかしかった自分、うれしかった自分と再会する。
体の奥の方から出てきた懐かしい自分を、自分の子供のように慰めたり、しかったり、可愛がったりすることで、いまの自分が癒されるのかもしれない。

「忘れっぽい天使」Vergesslicher Engel 1939年
パウル・クレー Paul Klee
1879-1940年,スイス
posted by アートジョーカー at 14:15| Comment(0) | Paul Klee | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月23日

パウル・クレー「美しい庭師」

La Belle Jardiniere

晩年のクレーの絵には、呪力が込められているのかもしれない。
太古の人類が、アルタミラやラスコーの洞窟壁画に込めた呪力。
タッシリ・ナジェールの岩に描かれた白い巨神の魔力。
ナスカの地上絵に託された得体の知れないメッセージ。
あるいは、ミステリーサークルの不気味な幾何模様に秘められた悪戯。

太古の、宇宙からの来訪者を描いたのではないか。
そんな妄想をめぐらせたくなるほど奇妙で訳の分からない線の動き。

「線が散歩する」とクレーは言う。
オートマティスムによって好きに散歩するとすれば、太古の人間が持っていたはずの、自然や事物を捉える動物的な「感度」を得ていたのかもしれない。

クレーは1935年頃、象皮病を患う。
さらにナチスドイツから退廃芸術家として非難され、作品を押収された。
が、死の数年前に創作意欲が甦った。
死の予感が、記憶の底に眠っていた太古のドラムを叩いたのかもしれない。


「美しい庭師」La Belle Jardiniere 1939年
パウル・クレー Paul Klee
1879-1940年,スイス
posted by アートジョーカー at 18:46| Comment(0) | Paul Klee | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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