
たとえば忘れ物をして叱られて、もじもじしているような天使。
病を得た晩年、天使という名のクレーの子供たちが、たくさん生まれてきたようだ。
泣いている天使、おませな天使、醜い天使、そして忘れっぽい天使などなど。
不思議なことだが、人は死を予感すると、もしくは死を覚悟すると子供の頃のことを思い出すものらしい。
たくさんの天使の絵は、おそらくクレー自身の中にいた、いろんな天使たちの姿を描いたもの。
子供の頃の自分を描くことで、悲しかった自分、恥ずかしかった自分、うれしかった自分と再会する。
体の奥の方から出てきた懐かしい自分を、自分の子供のように慰めたり、しかったり、可愛がったりすることで、いまの自分が癒されるのかもしれない。
「忘れっぽい天使」Vergesslicher Engel 1939年
パウル・クレー Paul Klee
1879-1940年,スイス