
僕は人が祈っている絵が好きだが、これは「罪を悔い改める」絵であるらしい。
悔恨、あるいは懺悔とかいったものも祈りの一種だろうと思う。
愛と哀しみの赤い衣裳を纏い、床には虚飾に満ちた生活の象徴と思われる装身具が投げ捨てられている。そしてマリアの膝の上にあるのは死を表すかのようなどくろである。激しく燃える蝋燭は儚い命を示しているのかもしれない。
色もかたちも、光がなければ見ることができない。
突き詰めて考えると、すべての絵は、なんらかの光を表現したものではないかとも思う。
この絵の場合、哀しく静かな光とでも形容したくなった。
「悔い改めるマグダラのマリア」
ジョルジュ・ド・ラ・トゥール Georges de La Tour
1593-1652年,フランス(ロレーヌ公国)