2006年08月13日

ミュシャ「ジスモンダ」

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昔は映画館や芝居小屋の正面に、職人がペンキで描いた大きな看板がかかっていた。
とにかく迫力のある絵が多かった。
看板が襲いかかってくるような、あまりの迫力に圧倒され、思わず中に入ってしまったこともあった。
サイケデリックで荒々しい看板は、昭和の場末の映画館によく似合っていて、独特の雰囲気を醸していた。

ミュシャの「ジスモンダ」は、芝居のポスターとして描かれたものである。
友人の代役としてたまたま回ってきた仕事だったようだが、ミュシャはアールヌーボーと呼ばれる新しい装飾美術の世界を表現し高い評価を得た。
この一枚のポスターによって一気に世に出た。
以後、ミュシャの絵は19世紀末のパリの町を彩ることになる。

「ジスモンダ」の主演女優はサラ・ベルナール。
サラもまた、世の女優に対する美意識を変えた女優といわれる。
やせっぽちの体に赤毛のちぢれ髪、ヨーロッパ中の男たちを虜にする美しい声を持っていたらしい。
元修道女で、毎夜、薔薇の棺の中で眠ったという不思議な女優だった。

「ジスモンダ」が持っているのは復活祭の前の「シュロの日曜日」で使うナツメヤシの葉。
ミュシャは芝居を何度も観て、もっともドラマティックであると感じた場面を描いたといわれる。

アルフォンス・ミュシャ Alphonse Mucha1860-1939年 チェコ
posted by アートジョーカー at 08:55| Comment(0) | Alphonse Mucha | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年08月06日

ミュシャ「メディア」

MedeeMedee

メディアとは激しく恋した魔女の名前。
ギリシャの詩人、エウリピデスの悲劇「メディア」の主人公。
1797年、ルイジ・ケルビーニ作の歌劇としてパリで初めて上演された。

話は女の愛憎劇である。
コルキス国の王女メディアは、叔母からさまざまの魔術を習い身につけていた。

イオルコス国の王子イアソンは、王位を継承した叔父に死の冒険を命じられた。
コルキス国の至宝を奪って来いというのである。
帰って来たら王位を譲るという。
イアソンはメディアの父コルキス国王に捕らえられるが、愛の神アフロディーテ(ヴィーナス)が彼に助勢する。
アフロディーテは、息子のエロス (キューピッド)にメディアの胸をめがけて愛の矢を射るように命じた。たんなる子供の悪戯だったのかもしれない。
メディアはイアソンへの恋に堕ち、恋の奴隷となる。
イアソンを牢から助け出したメディアは、弟を八つ裂きにし、そのばらばらにした身体を投げて追手から逃れた。

イアソンとメディアは、イオルコス国に戻り、結婚し子供もふたりできた。
が、叔父王は王位を譲らなかった。
メディアは叔父王の娘たちを魔術で騙し、叔父王を釜で煮る。
ふたりはイオルコス国を追われ、コリントス国へと逃れる。

イアソンは、メディアの異常な愛を恐れてもいた。
イアソンは、メディアを捨てて、コリントス国の王女との再婚を図る。
メディアはイアソンの裏切りを知り、憎しみの炎を燃やす。
怨念の魔法をかけたウェディングドレスを王女に贈った。
王女がドレスを着ると、地獄の業火に包まれた。
これを助けようとしたコリントス国王も宮殿もすべて焼き尽くされた。

愛と憎しみの業火と化したメディアは、ふたりの子供をイアソンの目の前で刺しころし、竜の戦車に乗って国を去る。

ミュシャの描いた歌劇「メディア」のポスター。

アルフォンス・ミュシャ Alphonse Mucha1860-1939年 チェコ
posted by アートジョーカー at 06:13| Comment(2) | Alphonse Mucha | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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