2006年06月11日

夜の窓、エドワード・ホッパー

The night window, 1928The night window

「私生活を覗かないでね」

昔、そんな広告コピーがあった。商品はブラインドだった。

都市の人間の多くは、蜂の巣のような建物に棲んでいる。
中の個室はそれぞれのプライベートな空間で、隣人の顔を知なくてもいいかわりに、けっして干渉してはならない。
しかし、隣では殺人鬼がナイフを研いでいるのかもしれないし、すぐ下の階では美女が着替えをしているのかもしれない。
それを覗き見たいと、奇妙な好奇心を起こす人もいる。

江戸川乱歩の小説に「屋根裏の散歩者」というのがあるが、ホッパーは夜の街の散歩者だったようだ。
ホッパーにとって街のあちこちに灯る光は、誘蛾灯のようなものだった。
深夜のバー、ドラッグストア、アパートメントの窓……。
夜のさまざまな色の光を求めてホッパーは彷徨ったらしい。

「夜の窓」1928年
エドワード・ホッパー Edward Hopper 1882-1967年,アメリカ
posted by アートジョーカー at 06:09| Comment(0) | Edward Hopper | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年06月10日

朝の日差し、エドワード・ホッパー

Morgensonne, 1952Morning Sun

人間は光を直接見ることはできないが、光がなければ物を見ることはできない。
光は何かを輝かせることができるが、光そのものは見えないのである。
光より速く走れば物が見えなくなるのかもしれないが、光の質量はゼロで、質量を持った物体は光より速く走ることができない。

「光は、私が知っているあらゆるものとくらべて異質だった。影ですらきらきらと輝き、無数の光が反射していた」-エドワード・ホッパー

ホッパーは若い頃、パリの印象派たちの絵画にひかれたという。
印象派の画家が光によって演出された瞬間の光景を写し取ろうとしたのに対し、ホッパーは光の構造、あるいは光そのものを描こうとしたのではないかとも思う。この絵における人や建物は光の通る場所、光を映し出す媒体であって、描き出したかったのは光そのものではないかとも感じる。

「私はあまり人間的ではないのかもしれない。私の関心は家の壁にあたる陽光を描くことにあるのです」-エドワード・ホッパー

ホッパー絵画において、描く人と描かれる人は、その関わり合いがどこか希薄である。
モデルの女に表情はなく、都市に生きる匿名の女であり、とくにこの女でなければならないという感じがしない。

不思議なのは、世界にはこの女の他に、どこまで行っても人がいないような感じがすることである。
朝起きて、これから無人の廃墟を彷徨いつつ何かを見つけなければならない女。
そんなストーリーが浮かんでくる。
たとえばデ・キリコは、時空の狭間から突如迷い込んでしまったような異世界を描く。
その世界と、どこか似ているような気もする。

「朝の日差し」1952年
エドワード・ホッパー Edward Hopper 1882-1967年,アメリカ
posted by アートジョーカー at 03:51| Comment(0) | Edward Hopper | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年06月09日

夜更かしの人々、エドワード・ホッパー

NighthawksNighthawks

「『夜更かしの人々』は夜の通りに対する私のイメージを表したもので、特別孤独なものを表現したわけではない」 -エドワード・ホッパー

ホッパーの絵は建物、あるいはその周囲の空間に不思議な情感が漂っていて、そこに人がいなくても成立するのではないかとも思う。
ホッパーは建物だけを描く場合も多い。人との関わりを感じさせる建物を描く。
建物(文明)と人間の関係性のようなものを描こうとしているのかもしれない。

アメリカでは、砂漠の中に忽然と新しい街が現れたりする。
歴史の地層に積み重ねられた、街そのものが持つしがらみや怨念が希薄で、どこか乾いているのである。

風景そのものが乾いた雰囲気をもっていて、その中にいる人も風景のひとつにすぎない。
街の人は、どこで生まれたのか、どんなルーツがあるのかもわからない、見知らぬ人同士なのである。

「夜更かしの人々」1942年
エドワード・ホッパー Edward Hopper 1882-1967年,アメリカ
posted by アートジョーカー at 05:47| Comment(0) | Edward Hopper | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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