Reclining Nude from the Back 1917
ふと、古いヨーロッパ映画を観たくなるときがある。
たとえば雨の休日、静かな昼下がりの頃とか。
ふだんはハリウッド映画をたのしんでいる。
ハリウッド映画は、新しいテクノロジーや現代の問題に正面から向かい、豪華なキャストと巨大な装置を使って表現され。いつもサプライズがあるし、エンターティメントとして確かに優れている。
ヨーロッパ映画は、いまも昔も、とくにどうということはない。
人の欲望や情念、性といったテーマを繰り返し扱ったものが多い。
だけど、古い街を支配する色彩の感覚や、生活の匂いのするペンキの塗られた部屋、そこで暮らす深い人間の表情……。ただひたすら、街と人を見るだけでここちよくなるようなふんいきがいい。
そしてミレーユ・ダルクやカトリーヌ・ドヌーブには、アメリカ女にはない、せつなさと、たおやかさがある。
モディリアーニが眼の中に瞳を描き入れるときは、短い酒びたりの生涯のなかで、少しだけ幸せな頃だったのかもしれない。