ただ、ヘタであることと、芸術の問題とはまったく無関係であるともいう。
セザンヌは、古典的な権威にも、前期印象派の「光の魔術師たち」にも、新しい絵画理論で対抗しなければならなかった。
生まれながらにして「主観」でしか絵を描けないゴーギャンやゴッホにとって、セザンヌの理論は魅力にみちていたのだろう。ゴーギャンはセザンヌの絵を買いもとめて、いつも身近においた。ゴッホは、セザンヌの豊かなタッチの影響をうけながら、驚異の色彩世界を開花させた。
セザンヌは「近代絵画の父」と呼ばれる。
ゴッホ、ゴーギャンといった後期印象派に濃いエッセンスを振りかけながら、さらにその絵画理論はピカソ、ブラックによってキュビズムとして継承発展していった。
キュビズムという、ある種の革命は、やがて理論が飛躍し、抽象絵画やオブジェ志向へと流れ、不可解な現代美術にまで行き着く。
すべての源流としてセザンヌがいた。
セザンヌは、芸術を「なんでもあり」にした。
Mont Sainte Victoire
Cezanne, Paul