2006年07月06日

ゴッホ「種まく人」

The SowerThe Sower

「自然を前にしたときのあまりの感動のため、僕は気を失うことがあります」

ゴッホはインパストという技法をもちいて自然を表現している。
もの凄い絵の具の盛り上がりは、ある種異様な感じで、絵の具の持つ油っこいマティエールが独特の迫力をもって訴えかけてくる。

インパストに加え、ゴッホの絵の凄まじさのもうひとつの要因は、補色対比にあるといわれる。
補色の関係にある色を対比させることで彩度が高くなったように感じさせ、鮮烈な印象を表現する。

ゴッホは自然を模倣するのではなく、感動した何かを伝えようとした。
未来においても、その感動が絵の中から一瞬で飛び出してくるように。
そのために独特の表現手法をもちいた。
たとえばアルルの自然や人間の「性格」といったものが、彩色の振動として時間を超えて飛んでくるのかもしれない。

種をまいている人のポーズは、ミレーの「種まく人」のそれとほとんど同じである。
ミレーへのオマージュであり、またさらにゴッホへのオマージュとしてロイ・リキテンスタインの「種まく人」もある。

「種まく人」1888年
フィンセント・ファン・ゴッホ  Vincent van Gogh 1853-1890年,オランダ


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2006年07月02日

ゴッホの「星空」

Starry Night Over the Rhone, 1888

一度だけだが、星空が立体的に見えたことがある。
天空に穴が開いて、そこから光が漏れてくるような感じではなく、近くの星の向こうに遠くの星が存在し、その向こうにもっと遠くの星があり、そういった星の層が無限に続いているという感じで立体的に見えたということである。その時、一番近い星は、すぐそばにあるような気がした。
空気が澄んで周囲に余計な人工光がない場所でないと、星空を立体的にみることはできないかもしれない。

「星へ行くためには死ねばいい。生きている間は星には行けないし、死ねば汽車に乗れない」

ゴッホがそういうように、奥行きのある立体のビジョンとして広がる星空を見ると、死ねば、ほんとうに星に行けるのではないかという気になってくる。
地上を速く移動するには鉄道や蒸気船を使えばよく、天上に早く行くためには病気になればいいとゴッホは妄想した。平穏に年老いて死ぬのは、ゆっくり歩いて向こうへ行くことであると。
ゴッホは37歳のとき、大急ぎでどこかの星へ行ったともいえる。

「星空」 Starry Night Over the Rhone 1889年
フィンセント・ファン・ゴッホ  Vincent van Gogh 1853-1890年,オランダ
posted by アートジョーカー at 04:12| Comment(0) | Vincent van Gogh | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年06月29日

ゴッホの「昼寝」

s.jpeg
昼寝(シエスタ)

昼寝ほど気持ちのいいものはない。
青い空があって、いい匂いのする藁があって、二人でひととき眠る。
人生いろいろあるだろうけどみんな忘れる。
幸せは長ったらしいものではなく、ほんの短い時間のなかにあるのかもしれない。
ゴッホは他人の幸せそうな風景をみて何を想ったのか。

ゴッホは生涯孤独から解放されることはなかったという。
孤独は短い人生のなかでどんどん深まっていった。
しまいには、精神の発作に襲われるほどになった。
ゴッホにほんのちいさな幸せでもあれば、もしかすると絵など描かなかったのかもしれない。
描かずにすんだのかもしれない。

「僕は音楽のようになにか慰めになるものを語りたい。男や女を永遠性を込めて描きたい」
のちにゴッホはそのようなことを書き記している。

フィンセント・ファン・ゴッホ  Vincent van Gogh 1853-1890年,オランダ
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