
「自然を前にしたときのあまりの感動のため、僕は気を失うことがあります」
ゴッホはインパストという技法をもちいて自然を表現している。
もの凄い絵の具の盛り上がりは、ある種異様な感じで、絵の具の持つ油っこいマティエールが独特の迫力をもって訴えかけてくる。
インパストに加え、ゴッホの絵の凄まじさのもうひとつの要因は、補色対比にあるといわれる。
補色の関係にある色を対比させることで彩度が高くなったように感じさせ、鮮烈な印象を表現する。
ゴッホは自然を模倣するのではなく、感動した何かを伝えようとした。
未来においても、その感動が絵の中から一瞬で飛び出してくるように。
そのために独特の表現手法をもちいた。
たとえばアルルの自然や人間の「性格」といったものが、彩色の振動として時間を超えて飛んでくるのかもしれない。
種をまいている人のポーズは、ミレーの「種まく人」のそれとほとんど同じである。
ミレーへのオマージュであり、またさらにゴッホへのオマージュとしてロイ・リキテンスタインの「種まく人」もある。
「種まく人」1888年
フィンセント・ファン・ゴッホ Vincent van Gogh 1853-1890年,オランダ