
泣きながら描かれたような女の線の魅力がある。
エゴン・シーレの絵は、身を掻きむしるような文学、それも死に絶えた私小説という感じがする。
貧相な体だが、女の肉と骨の魅力がある。
絵に匂いがあるとすれば、(なま)の女の濃い体臭。
シーレのデッサンは、血と肉をなすりつけるようなデッサン。
シーレにとって筆を走らせることは、女の体を撫でることと同義だったのかもしれない。
たとえばクリムトの描く女が黄金の光を身に纏った「陽」とすれば、シーレのそれは女の内部に棲む懊悩を抽出した「陰」なのかもしれない。
「モデルの女は肉を抉られ骨と皮を晒し、画家自身も人に見せられない煩悩を晒す」
とでも表現したくなる。
Girl Standing
エゴン・シーレ Egon Leo Adolf Schiele
1890-1918年,オーストリー
【関連する記事】