2006年11月06日

モンドリアン「赤、青、黄のコンポジション」

Composition with Red Blue Yellow


近代という世界観では「個」を大切に考えてきたはずである。
セザンヌ以降の近代絵画の多くは、激しい主観や独特の重い感情表現によって彩られている。
ゴッホなどは、なまの感情を絵の具に乗せたと言われる。

ところがモンドリアンは、新造形主義とかいうものを唱えた。
なぜかは知らないが、絵画表現から主観や粘つく感情を排除しようとしたらしい。

たとえば誰かが対象を観察し、描こうとすると、そこにはどうしても主観が入ってくる。
見つめれば見つめるほど主観から離れられなくなる。
そこでモンドリアンは生肉を削ぎ落とすような単純化を行ったのかもしれない。
風景や人物といった複雑な形態を描くのではなく、図形的な基本要素である水平線、垂直線、そして3つの色のみで空間を構成した。よりシンプルで普遍的な抽象絵画へのアプローチである。

モンドリアンは、ピカソらのキュビズム絵画にふれることで、空間というものが持つ、本質的な魅力を発見したのかもしれない。

たとえば数学の世界において、「美しい数式」とか「エレガントな数式」というものがあるらしい。
アインシュタインの一般相対性理論における重力方程式も美しいといわれる。
それは、時空と物質のシンプルな関係式であり、その解からは、ブラックホールの概念や膨張宇宙論などが導かれたという。

数式には、人間の主観はない。
ガリレイが言うように、数学は自然の言葉であって、アインシュタインはその美しい言葉(方程式)を発見したのである。

モンドリアンは、色と色、色と線の関係式、すなわち自然の美しい秩序を発見しようとしたのかもしれない。
感情を排し、基本要素だけをシンプルに配すことで、自然のあるがままの美しさを示するのである。

「赤、青、黄色のコンポジション」 Composition with Red Blue Yellow
ピエト・モンドリアン Piet Mondrian 1872-1944年,オランダ
posted by アートジョーカー at 11:16| Comment(0) | Others | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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