
晩年のクレーの絵には、呪力が込められているのかもしれない。
太古の人類が、アルタミラやラスコーの洞窟壁画に込めた呪力。
タッシリ・ナジェールの岩に描かれた白い巨神の魔力。
ナスカの地上絵に託された得体の知れないメッセージ。
あるいは、ミステリーサークルの不気味な幾何模様に秘められた悪戯。
太古の、宇宙からの来訪者を描いたのではないか。
そんな妄想をめぐらせたくなるほど奇妙で訳の分からない線の動き。
「線が散歩する」とクレーは言う。
オートマティスムによって好きに散歩するとすれば、太古の人間が持っていたはずの、自然や事物を捉える動物的な「感度」を得ていたのかもしれない。
クレーは1935年頃、象皮病を患う。
さらにナチスドイツから退廃芸術家として非難され、作品を押収された。
が、死の数年前に創作意欲が甦った。
死の予感が、記憶の底に眠っていた太古のドラムを叩いたのかもしれない。
「美しい庭師」La Belle Jardiniere 1939年
パウル・クレー Paul Klee
1879-1940年,スイス
The Art Impression
