2006年11月14日

エゴン・シーレ「死と乙女」

Death and the Maiden (Mann Und Madchen), 1915

シーレはまだ画学生だった頃、40代半ばのグスタフ・クリムトと出会う。
クリムトは短い生涯を通じての良き師、あるいは良き友となったという。

「死と乙女」に描かれた女は、クリムトの絵のモデルをしていたヴァリー・ノイツィで、シーレの恋人だった。数年の同居生活が続くが、シーレがのちに妻とするエディットに心を移したため、ヴァリーは身を引き、第一次大戦に看護婦として従軍した。やがて病を得て亡くなる。23歳だった。

男は目が逝ってしまっている。
瞳孔がひらいているような気がする。
虚ろであり、心の抜けた肉体、すなわち死体になっているようだ。
女が寄りかかり、肉の触れあいを求めてみても、死体となった男は冷たい。

「生まれてすみません」
と書いたのは太宰治だが、シーレもまた、おのれ自身を直視し、悪臭のする心の襞までをさらけ出しているような気がする。

「死と乙女」 Death and the Maiden 1915年
エゴン・シーレ Egon Leo Adolf Schiele
1890-1918年,オーストリー 


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2006年11月12日

ドミニック・アングル「グランド・オダリスク」

The Grand Odalisque

芸術が時代を先取りするのかどうかはわからないが、少なくともある種の芸術家たちは、時代の底の方から吹いてくる風を感じるのに違いない。そうして生まれた芸術が、さらに時代の空気を創っていくのかもしれない。

マリー・アントワネットの時代、享楽的な貴族趣味のロココ様式を否定する、のちに新古典主義と呼ばれる芸術の潮流が生まれたといわれる。
それは、ギリシャ・ローマ時代の知的で論理的な観察を模範としたらしい。
緻密な描写、理想的な人体の再現といった古典様式の再評価である。
新古典主義の流れは、フランス革命からナポレオン帝政へと、時代の空気が変化する中で広がっていったといわれる。

ドミニック・アングルは、新古典主義を代表する画家である。
古典様式を超える、新しい美意識の創造があった。
同時代に対立したロマン主義の画家ドラクロアの「色彩」に対し、アングルは「線」にこだわったといわれる。
描かれた女は「背骨の椎骨が普通の人間より3本ほど多い」と批判されたらしいが、女のくねった背中がおそろしく悩ましい。
官能的な曲線の創造である。

オダリスクとは、宮廷のハレムに暮らす女たちのこと。
かつて、この世の奥深くに咲いていたらしい、妖しい花の曲線。

「グランド・オダリスク」1814年
ジャン=オーギュスト=ドミニック・アングル Jean-Auguste Dominique Ingres
1780-1867年,フランス 
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2006年11月11日

フェルメール「画家のアトリエ」

Allegory of Painting

画家に描かれている女性は、ギリシア神話の神クレイオに扮している。
クレイオは9人のミューズ(女神)のひとりで、歴史を司る。

女神は、月桂冠を被り、右手にトランペット、左手に歴史書を抱えている。
「勝利を得、名声を高らかに響かせ、歴史に刻まれる」
小道具たちは、画家が将来手にする栄光の象徴であるといわれる。

フェルメールは宿屋の主人をしながら妻と10数人もの子を養っていたらしい。
将来の画家としての名声を確信していたのかもしれないが、43歳の若さで他界した。借金を残し家族は破産したともいわれる。真の名声を得るまで、200年ほど待たなければならなかった。

一時期、アドルフ・ヒトラーがこの絵に執着したらしい。
やがて悪魔的な手法で買い取ったという。
「勝利を得、名声を高らかに響かせ、歴史に刻まれる」
クレイオという女神に託された寓意が、ヒトラーの心にも強く響いたのかもしれない。

「画家のアトリエ(絵画芸術の寓意)」1665年頃
ヨハネス・フェルメール Johannes Vermeer1632-1675年,オランダ
posted by アートジョーカー at 05:51| Comment(0) | Johannes Vermeer | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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