
さまざまの文字が浮かぶ空間としての白い紙。
あるいは、本をめくると、ふいに現れる空白のページ。
なぜだか知らないが、詩は絵でもあるという。
言葉の持つ意味だけが問題となるのではない。
どのようなカタチをした文字が、どのように並び、流れ、絡み合い、どのような旋律を奏でているのか。
あるいは文字と文字の間が、豊かな白い空間に満ちているのかどうか。
紙につむがれた詩は単なる文章ではなく、視覚芸術なのであるという。
「空白のページ」は、フランスの詩人ステファヌ・マラルメへのオマージュといわれる。
マラルメは詩における余白(空白)の意味に気づき、視覚詩、あるいは図形詩といったものを試みたという。
白い月の夜、まだ何も書かれていない白いページを前に、詩人が言葉を絞り出すための苦悩の作業をしているようなイメージを感じた。
「思考を目に見えるものにするために、私は絵を利用する」
マグリットはそう言っている。
思考とは、霧のゆらぎのようにあいまいなもの。
白いページに文字が浮かび始めると、思考がビジュアルとして目に見えてくるのかもしれない。
「空白のページ」 La page blanche 1967年
ルネ・マグリット Rene Magritte 1898-1967年,ベルギー