2006年08月26日

ラ・トゥールの光と闇

St. Joseph the Carpenter, Detail of the Infant Christ, circa 1640

ラ・トゥールは、一般にフランス古典主義の画家として分類される。

聖書のことはよくわからない。
たけど、この一枚の絵に激しく打たれてしまった。
洗礼を受けたいとさえ思った。
この宗教のもつ深い暖かみと、神秘の魅惑にふれてしまったようだ。
闇の世界を、たった一本の蝋燭の光が照らす。
優しく無垢で純粋な、神秘の人を浮かび上がらせる。
劇的な瞬間。

ラ・トゥールはどこかフェルメールに似ているような気がする。
歴史に埋もれていたものが再発見されたこと、宗教画と風俗画があること、作風の変化を時系列で追うのが困難で、真筆の見極めもむずかしいということ。
フェルメールの真作とされているものが30数点なら、ラ・トゥールの真作は20数点(50点以上あるとする研究者もいる)。
どちらの絵も、このうえなく貴重なものであるところも似ている。

St. Joseph the Carpenter, Detail of the Infant Christ

ジョルジュ・ド・ラ・トゥール Georges de La Tour
1593-1652年,フランス(ロレーヌ公国)
posted by アートジョーカー at 10:43| Comment(0) | Georges de La Tour | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年08月22日

マグリット「描かれた青春」

La Jeunesse IllustreeLa Jeunesse Illustree

映画や小説では対立というものがストーリーやテーマの核をなす場合がある。
できるだけ異質なもの、異質な人物をぶつけ合うことで物語が立ち上がってくることが多い。

たとえば林檎がバナナやナイフといっしょに描かれていればふつうである。
しかし林檎がバスルームにぽつんと置かれていれば、なにか特別な意味がありそうな気がする。
それも死体といっしょにだ。
映画や小説なら探偵が出てきて、そこから「ミステリ」の謎解きが始まる。
時間内に、あるいは決められた紙数の中で謎は解決されるだろう。

たとえば田舎道に石膏像が置かれていたら、人は考え込む。
それも生きたライオンの前にだ。
しかしマグリットの絵に解決はない。
奇妙な違和感、もしくは驚きがあるだけである。
神秘の物語は鑑賞者自身がつむぐしかない。

ルネ・マグリット  Rene Magritte 1898-1967年,ベルギー
posted by アートジョーカー at 05:28| Comment(0) | Rene Magritte | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年08月20日

ルネ・マグリット「心の琴線」

La Corde SensibleLa Corde Sensible

日常の事物が異様に巨大化していたり、あるはずのない場所に物が転移していたりすると、心がつねられたような気がする。ちょっとした痒みを覚える。

雲がグラスに収まろうとしている。
あるいはグラスから逃れようとしている。
雲はじっとさせられているのをちょっと嫌がっているのかもしれないし、少し恥ずかしがっているのかもしれない。
芸者ワルツの歌詞ではないが「恥ずかし嬉し」という微妙な心が現れているような気もする。

マグリットの絵の中に何かの象徴を見つけようとしても無駄なことであると思う。
マグリット自身、象徴を探さないでほしいと言っている。
絵の中に暗喩などもないのである。

 僕は雲を集めようと思って、
 霜の巨人のように大きなグラスを大地に置いた。
 雲が少しずつ集まってきた。
 ある雲はいそいでやってきた。
 ある雲はゆっくりとやってきた。
 僕のグラスには毒が塗ってある。
 甘い香りのする毒だ。
 雲たちは大きな塊になって、
 僕のグラスの上で、嬉しそうに恥ずかしそうに震えていた。

上の下手くそな詩は、いま適当につくったものである。
マグリットは、自身を詩人と規定し、「言葉では語れない詩」を描いた。
ビジュアルそのものが「心の琴線」を引っ掻いてきて、首を傾げさせる。
不思議な「違和感」の残像が残り続ける。

ルネ・マグリット  Rene Magritte 1898-1967年,ベルギー
posted by アートジョーカー at 13:14| Comment(2) | Rene Magritte | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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