2006年07月18日

ルネ・マグリット「光の帝国」

L'Empire des LumieresL'Empire des Lumieres

空をみると明るい昼間だが、地上は夜で屋敷には灯りがともっている。
この世界では、天と地と、それぞれ別の時間がながれているようだ。
陰陽の「太極図」を想わせる不思議な絵。

陽光を嫌う吸血鬼の屋敷かもしれないし、ただ夜の静けさと灯火の柔らかさを好む人の住処かもしれない。
たとえば江戸川乱歩は、少年の頃、昼間も暗い屋根裏部屋を好んだという。
作家となってからは、邸の敷地に「幻影城」なる土蔵を建てて閉じこもり、ちいさな灯をともして小説を書いたらしい。

「うつし世は夢 夜の夢こそまこと」

乱歩のように夜を真実と思ってもいいし、逆に昼こそ真実だと思うのも自由だろう。
マグリットは、昼間の地の上に夜の空がひろがっている、この世界とは逆転した絵も描いている。

ルネ・マグリット  Rene Magritte 1898-1967年,ベルギー
posted by アートジョーカー at 13:20| Comment(0) | Rene Magritte | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年07月17日

ルネ・マグリットの千里眼

La ClairvoyanceClairvoyance

精神に不安定さがあったり、わざと奇抜な行動を起こしたりした芸術家は多いが、マグリットの生活は静謐だったようだ。
毎日おなじ時間に起きて、規則正しい小市民的な生活の中で創作したといわれる。 
旅行もあまり好まず、外でスケッチをすることもなかったらしい。

「机の上の電話機にも詩の心がある」
マグリットは家の中の日用品などにも詩情を感じモチーフとしている。
詩人が詩を書くように、頭に浮かぶイメージを表現したという。

ただ不思議なのは絵を描くときもスーツにネクタイをしていたということ。
これは、ある種の奇行だとも思う。

画面の中の画家は、涼しい顔で卵を見つめながら鳥の絵を描いている。
千里眼か予言者のような目で、卵の未来を見通しているのかどうかはわからないが、イマジネーションが別の世界へと飛んでいることは間違いない。
シュルレアリスムにはいろいろあって面白い。

ルネ・マグリット  Rene Magritte 1898-1967年,ベルギー
posted by アートジョーカー at 10:31| Comment(0) | Rene Magritte | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年07月09日

フェルメールとメーヘレン

謎解きフェルメール

「謎解きフェルメール」小林頼子・朽木ゆり子著(新潮社)では、フェルメールの贋作者として歴史に名を残すハン・ファン・メーヘレンの絵をいくつかみることができる。
それらは、フェルメールに似せた単なる贋作ではないような気がする。
メーヘレンという「作家」の手による、独特の世界観がある。
そうでなければ、オランダ美術史界の重鎮だったアブラハム・プレディウスや、ゲーリングらを欺くことはできなかったと思う。
しかしメーヘレンの絵は、どこか死を感じさせるような無気味なふんいきがある。

フェルメール作品の鑑定は難しいという。
真贋について、研究者のあいだでも、議論の定まらないものがある。
初期のフェルメールは古典的な物語を題材にしている。のちに、市民の生活を描くようになった。
同じフェルメール作品でも、物語画と風俗画では大きな違いがあって、このことも、鑑定を難しいものにしているという。
フェルメール自信の手になる真作と同時代の画家が描いた非真作があり、さらに意図的に作られた贋作が入り乱れているのである。

メーヘレンは「キリストと悔恨の女」という絵を描いた。
これをフェルメール作品であると偽り、ナチス・ドイツの国家元帥で、美術蒐集家でもあったゲーリングを欺いたのである。
メーヘレンは、国家の財産をナチスに売ったとして起訴された。自分の作品であると告白したが、容易には信じてもらえず、法廷で実際に絵を描いてみせたという。

「謎解きフェルメール」ではフェルメールの生涯をたどりながら、全32点の絵を紹介している。それぞれの絵に込められた寓意なども綴られる。
フェルメール独特の、光と構図の秘密とされる「カメラ・オブスキュラ」についての解説もある。「カメラ・オブスキュラ」とは初期の写真機のこと。
フェルメールは、レンズを通して見た光景をもとに描いたのではないかといわれている。
本書では、CGによる構図の分析を行い、「カメラ・オブスキュラ」を実際に使ったのかどうかを検証している。
posted by アートジョーカー at 06:25| Comment(0) | 美術評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする