2006年06月29日

ゴッホの「昼寝」

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昼寝(シエスタ)

昼寝ほど気持ちのいいものはない。
青い空があって、いい匂いのする藁があって、二人でひととき眠る。
人生いろいろあるだろうけどみんな忘れる。
幸せは長ったらしいものではなく、ほんの短い時間のなかにあるのかもしれない。
ゴッホは他人の幸せそうな風景をみて何を想ったのか。

ゴッホは生涯孤独から解放されることはなかったという。
孤独は短い人生のなかでどんどん深まっていった。
しまいには、精神の発作に襲われるほどになった。
ゴッホにほんのちいさな幸せでもあれば、もしかすると絵など描かなかったのかもしれない。
描かずにすんだのかもしれない。

「僕は音楽のようになにか慰めになるものを語りたい。男や女を永遠性を込めて描きたい」
のちにゴッホはそのようなことを書き記している。

フィンセント・ファン・ゴッホ  Vincent van Gogh 1853-1890年,オランダ
posted by アートジョーカー at 20:22| Comment(0) | Vincent van Gogh | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年06月27日

空もオリーブの木も、ゴッホのうねる光景の中へ

La Recolte d'OliveLa Recolte d'Olive

「オリーブの木に青白い花が咲き、昆虫がさかんに飛び回る頃には景色全体が純粋な青色に輝く。葉が熟してくると、空は緑やオレンジ色の光にあふれ、秋に葉が紫がかると、あざやかな黄色の太陽との鮮烈なコントラストをなす。にわか雨の後は空全体がピンクとオレンジに彩られ、ピンク色の婦人たちがオリーブの果実を収穫する」

ゴッホにとって、オリーブ園の光景は魔法のように変化する。
個々の微細な輝きを発見する、その目と精神は、ただものではない。
現世の向こうにある神の世界の色彩(あるいは魔界の色彩)まで感じ取っているかのよう。
空もオリーブの木も草も土も、みんなうねりながら迫ってきて、めくるめく景色の奔流がゴッホを圧倒する。

フィンセント・ファン・ゴッホ  Vincent van Gogh 1853-1890年,オランダ
posted by アートジョーカー at 09:41| Comment(0) | Vincent van Gogh | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年06月25日

ゴッホ、グレーのフェルト帽の自画像

Self Portrait in Grey Felt HatSelf Portrait in Grey Felt Hat

日野日出志の怪奇漫画に「蔵六の奇病」というのがある。
体に奇妙な出来物が発生し、村を追われた蔵六は、ひとり山に入り絵を描き始める。
自らの体から出た膿で極彩色の絵を描き始める。

創造の情熱はどんな時にもやってくる。
情熱は体を突き破ってでも表に出てくるのかもしれない。

「僕は情熱の人だ。馬鹿げたこともするし、あとで後悔もする」
「こういう僕は危険人物と自覚するべきか。そうは思わない。この情熱を良い方向へむけるためにあらゆることを試してみることだ」-フィンセント・ファン・ゴッホ

1887年といえば、ゴッホがアルルへ行く前の年だが、その頃に描かれたこの自画像にも、すでに強烈な色彩世界の表出がみてとれる。
ゴッホの内面でたぎっていたマグマが噴出し始めたように感じる。
顔面の、ひとつひとつの細胞から高温の熱が棘のように鋭く噴き出てきて、空間に飛び散り、空間そのものを回転させている。
情熱の膿を周囲にまき散らしているかのようだ。

「グレーのフェルト帽の自画像」 1887年
フィンセント・ファン・ゴッホ  Vincent van Gogh 1853-1890年,オランダ
posted by アートジョーカー at 13:43| Comment(0) | Vincent van Gogh | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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