2006年05月20日

アンリ・ルソー「蛇使いの女」

Snake Charmer, 1907Snake CharmerExotic Landscape with Lion and HuntersExotic Landscape

ルソーは平凡な税関職員で、海外旅行の経験がなかったという。
つまりは熱帯のジャングルも、エキゾチックな蛇使いの女も、野生のライオンの姿も、自身の目で観たことはなかったらしい。

ルソーの生暖かい意識だけが、熱帯へと飛んだ。
どこへ飛んだのかはわからない。別の星まで飛んで行ったのかもしれない。
見たこともないような奇妙なカタチをした熱帯樹林には、濃い精気が宿っているようだ。
そこは、船に乗って、じかには行けない異世界。
そこにいる動物たちは、この世の生き物ではないのかもしれない。

世界はパラレルに存在していて、観察によってひとつの世界が決定するという。
ルソーの世界は、奇妙にずれている。
しかしそこには、不思議な懐かしさがある。
人類の故郷であるかのような懐かしさが。

アンリ・ルソー Henri Rousseau 1844-1910年,フランス
「蛇使いの女」1907年


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2006年05月18日

ドガ「舞台の踊り子」

Star Edgar Degas

エミール・ゾラは、1877年に「居酒屋」という小説を発表している。
舞台はパリの裏町。主人公のジェルヴェーズは最初の夫に捨てられ、次に所帯をもった男も事故にあい、洗濯女をしながら子供を育てる。馬車馬のように働いて自分の店をもったが、酒びたりの狂った夫と女に乗っ取られ、自らもアルコールに溺れゆく。そんな母親の姿をみた娘ナナは、町のチンピラたちとつきあい始めるようになる。
ゾラが、ジェルヴェーズの娘を主人公に描いたのが小説「ナナ」である。
ナナは舞台女優兼高級娼婦になっていた。妖艶なまなざしで上流社会の男たちを手玉に取り、破滅へと向かわせるが、やがて病に冒されて死ぬ。

19世紀半ばのパリには、たくさんの踊り子たちがいた。
舞台は娘たちの品評会でもあったという。
娘は上流の紳士たちに品定めをされ、愛欲の対象となり、金銭の大いなるゆとりを得る。
娘をダンサーにする母親たちは、下町の洗濯女が多かったという。

ドガの「舞台の踊り子」に注ぐ光は、妖しい光だ。
陽光ではなく、人口照明の光を当てられ、白い肉体と衣裳が美しく輝く。

「舞台の踊り子」1878年
エドガー・ドガ Edgar Degas 1834-1917年,フランス
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2006年05月15日

マネの「笛を吹く少年」

【マネ】笛を吹く少年(560mm×710mm)アートポスター

アニメの少年キャラクターの声は、女性の声優が演じるのがふつうだ。
声変わりしてしまった男では、少年を演じられない。
もしかすると、現実の少年自身も、架空世界の少年を演じることができないのかもしれない。
少年期の男子がもつ不思議な魅力は、中性的であり、また女性的でもある。

マネは、「笛を吹く少年」を描くにあたって女性のモデルを使った。
ヴィットリーヌ・ムーランという町娘で、マネがよく使ったモデルだった。
楽隊の少年が放つ不思議な魅力の秘密も、そこにあるのかもしれない。

この絵には背景がない。後ろにあるべきさまざまの景色がない。少年の表情と、細く柔らかな体の線だけを観るためには背景など必要としないと思う。
しかし、当時のサロン展の審査員たちには理解されず、「笛を吹く少年」は落選したという。
「居酒屋」を著した自然主義の文学者エミール・ゾラは、マネの絵の理解者だった。
この絵が落選したことを知って怒り、マネを擁護する美術批評を書いたという。
posted by アートジョーカー at 12:25| Comment(0) | Others | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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