2006年05月25日

アルタミラのマリア、危うい壁画1

Bisons, from the Caves at Altamira, c.15000 BC (cave painting)Altamira Cave

人類史上、最高峰の壁画はアルタミラの洞窟壁画ではないかとも思う。
先史時代に描かれたという、そのあまりの古さと、消えゆくような危うさ。
赤と黒を基調とした呪術的ともいえる色彩と陰影。
いまは存在しない、遠いまぼろしのような生き物の姿が発する妖気じみたメッセージは、ただごとではない。

アルタミラの壁画は、1879年、技師ソウトウラに連れられた5歳の娘マリアの好奇心が発見したという。恐ろしく深い洞窟の中で、マリアはふと天井を見上げた。そこに不思議な牛の絵が描いてあったという。

アルタミラ洞窟は、先史時代のシスティーナ礼拝堂ともいわれる。
バチカンのシスティーナ礼拝堂は、ミケランジェロがシリア人の弓のように反りかえって「創世記」のフラスコ画や「最後の審判」を描いた、圧倒的な芸術のエネルギーに沸く場所。

しかし、アルタミラ洞窟壁画には、太古から時空を超えてやってくるような叫びがある。
このうえない妖しさ、不思議さ、原初の芸術だけが放つ野太い魂の響きがあるような気がする。

Altamira Cave マドレーヌ期 (約1万8千年〜1万年前)


posted by アートジョーカー at 14:33| Comment(1) | Others | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年05月24日

ブリューゲル「ネーデルランドの諺」

b.jpg

諺はたいてい古い時代からあるもので、その奥深さに感心したりして「昔の人は偉かった」となる。
狭い世界だけで使われる隠語(ジャーゴン)や、外来の新しい概念を表す言葉はどんどん増えているが、新しい諺というものは、ほとんど生まれていないような気がする。
それどころか間違って使っていたりする。

「袖ふりあうも多生の縁」
を「多少の縁」と書いてしまうと、本来の仏教的な意味が忘れられるかもしれない。
「覆水盆に返らず」
を「帰らず」とか書いてしまう人も多い。
これだと、覆水という男が盆に故郷に帰ってこなかったので云々と、まるで中国の故事にあるような別の意味を持つ諺のようだ。
もっとも「覆水盆に返らず」も、おそらく出典は中国の故事だとは思うが。

ピーテル・ブリューゲルの「ネーデルランドの諺」は多弁な絵だ。よくしゃべる。それだけに楽しい。中世ヨーロッパの農民の生活の中に、たくさんの言葉が含まれている。

「二兎を追う者は一兎も得ず」は、画面の一番右下で離れたパンを同時に掴もうとして苦労している人。「覆水盆に返らず」は、その左下。「捕らぬ狸の皮算用」は画面中央からやや左よりの、まだ鳥が産んでもいない卵の数を数える男。「一石二鳥」は、中央よりやや上の、はえ叩きで二匹のはえをいっぺんに叩こうとしている人、などなど。

「ネーデルランドの諺」1559年頃
ピーテル・ブリューゲル 1525-1569年、フランドル(フランダース)
Pieter Bruegel the Elder, The Netherlandish Proverbs


posted by アートジョーカー at 16:24| Comment(0) | 美術評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年05月22日

ロートレックの「化粧」

The ToiletToulouse-Lautrec

踊り子の楽屋を覗きみたいという願望はある。
化粧をする女の背中をみたいという思惑はある。
華やかさの奥にある、秘された部分を覗きみて、人間の生の匂いを嗅ぎとり、そこから、それぞれの人生とやらにまで想いをめぐらせるという行為は、マニアックか、あるいは悪趣味か。

ロートレックの場合は、屈折した貴族趣味とでもいい表せるものかもしれない。
ロートレックは、1864年、南仏の伯爵家に生まれた。
14歳で大腿骨を骨折、下半身が発育不良のままの、不自由な身体で生涯を送ることになる。
モンマルトルに住み、世紀末の盛り場を歩き、人間を描き、胃を焼くようなアブサンを身体に流し込んだ。アブサンは最高に強い録色の酒で、悪魔の酒ともいわれる。

ゴッホもアブサンを好んだといわれる。
ゴッホは耳を切り取り、ピストルで最後を遂げたが、ロートレックは病院に担ぎ込まれ、やがて他界した。
享年は、同じく37歳。

トゥルーズ=ロートレック Henri de Toulouse-Lautrec
1864-1901年,フランス
「化粧」1896年
posted by アートジョーカー at 10:27| Comment(0) | Others | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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