
ゴッホは短い生涯のなかで、いくつかの恋をしている。
恋といっても、絵のように情熱的に燃え上がったのはゴッホの方だけで、相手にとっては迷惑このうえないものだったらしい。
二十代の後半、ゴッホはエッテンの家に帰る。
伯父の家に、離婚して子を連れて戻ってきていた従姉がいた。
ケー・フォスという女性だった。彼女に恋をしたらしい。
ゴッホの恋には駆け引きもなにもなかった。
毎日のように伯父の家に通い、しまいには愛のあかしを見せるためだといい、蝋燭の炎に指を突っ込んだという。こんなに愛しているんだと。
彼女は得体の知れない狂気をみたようで、恐怖を感じただろう。
しかし、この失恋、絶望がゴッホをして絵に向かわせることになる。
生きることのすべてのエネルギーを絵にそそぐしかなくなってしまったのだろう。
フィンセント・ファン・ゴッホ Vincent van Gogh 1853-1890年,オランダ